スキー場には、大抵音楽が流れている。先日スノボをしに行った時は、2022年の大ヒット曲、official髭男dismの「Subtitle」が何度も流れていた。今年の冬は「ゲレンデと言えばこの曲!」が「粉雪」から「Subtitle」に変わった歴史的なシーズンだったように思う。
お陰様でサビが脳に焼き付き、帰り道では、周りに人がいないかを確認し「言葉はまるで雪の結晶 君にプレゼントしたーくても♪」とカラオケの声量で歌ってしまった。ここまで歌ったところで、「どんな素敵な言葉を考えても、それをプレゼントする恋人が自分にはいないのだ」という現実を思い出したが、腕を大きく振りながらスキップしてごまかした。
音楽は日常に彩りを加えてくれるが、聞きすぎも良くない。僕は曲にハマり過ぎると、音楽が脳内で再生されて、寝付きが悪くなる。いや、寝付きが悪くなるならましだ。テスト中にONE OK ROCKの「完全感覚Dreamer」が流れ始めたら計算ミスで-15点確定である。
とにかく、しばらくは「Subtitle」を封印しようと決めた。封印すると言っても、口ずさまないように心がけ、スマホで音楽を再生しなければいいだけだ。
しかし、この社会には音楽がいたるところで流れている。
行きつけの八百屋さんに入った時、米津玄師の「KICK BACK」が聞こえた。このお店には、日によって全く違う世代の曲が流れているのだが、今日はナウい曲がテーマのようだ。ということは・・・。いやいや、「Subtitle」はリリースから4ヶ月くらい経ってるし、ヒット曲は他にもあるからね。
「KICK BACK」が終わった。割引シールが張られたバナナに手を伸ばしつつも、意識の半分は店内のスピーカーに向けられていた。「Subtitle」が流れた場合、バナナを棚に戻し、店から一時退避しなければならない。
「凍り付いた心には太陽を そして君にとってそのポジションを~♪」
自分だけ気をつけてれば音楽断ちできるなんて、♪だいぶそんな傲慢な思い込みーを拗らせてんだよ、ごめんね♪
やっぱりいい曲だ。最後まで聞かずにいられない。曲が終わるまでの5分間、ゆっくりと買い物をした。店内のBGMを効果的に使うと、滞在時間が長くなり購入金額が増えるのは本当らしい。カゴの中には、買い物メモにはなかった水菜としめじがひょっこりと入っていた。
僕は一曲だけで行動を操られてしまった。だったら一日中音楽を浴び続けている野菜たちはどんな気持ちなのだろう。閉店したら一斉に大合唱を始めるのだろうか。「トイ・ストーリー」が完結した今、ピクサーの製作スタッフは新作映画「ベジタブル(仮題)」の構想を練っているに違いない。
日用品を買いに大手スーパーに行くと、本日が特売日であることを周知する歌が延々と流れていた。T-Falが湯を沸かすよりも速く買い物を済ませ、僕は店を出た。店内BGMも使いようである。
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