講義は短し走れよ己

ぬるい話
UnsplashGilles Rolland-Monnetが撮影した写真
プレゼンに代表される「発信力」が重視されてますが、同じくらい「受信力」が大切です。かつて日本人の「受信力」は凄まじかった。英語やオランダ語で書かれた数冊の書物から知識を吸収し、一気に発展しました。昔と違い、今は情報が溢れています。複数の情報があれば、安易な方に流されてしまいがちですが、「わかりやすい情報=大切な情報」であるとは限りません。むしろ、誰もが通り過ぎるところにこそ、大事な情報が隠されているのですよ。

これは、今年度で退官される教授が最後の講義で仰っていたことを、僕なりの解釈でまとめたものだ。

なるほど、僕は大学の講義がわかりにくいと思っていたが、それは僕の受信力が不足していただけだったのか。来学期からは、手を頭の後ろに組んで、受信力を高めよう。いや、これだと知識ではなく男性ホルモンを受信してしまう。

退官される教授は、上水研究の権威であり、国際会議の座長まで務められた方だ。先日、研究室のOB・OGや、企業からも人が集まる大規模な退官セレモニーが行われた。研究者としてのキャリアを知る上で絶好の機会になると思い、僕も参加を決めた。

式典のスタートは午後2時45分。午前中は自宅から約5㎞離れた中央地区リサイクルセンターに行く予定だった。不要になった小型家電や古着、牛乳パックを出す為だ。よくそんなめんどくさいことをするなと思われるかもしれない。だが、私の専攻は環境工学だ。「環境」と名のついた学問の徒として、レポートを裏紙に書いて提出することも、市の資源回収ルールを守ることも責務である。ただ、文化祭で私たちのクラスが、分別せずにまとめてごみを出したことはもちろん内緒だ。

運動不足を解消すべく(交通費を節約すべく)、走って行くことにした。10時半に家を出れば、12時前には帰ってこれる。余裕をもって式典に臨めるな。

しかし、出発が遅れるのは、大学生七不思議の一つである。10時半にはランニングウェアに着替えていたのに、気付いたら12時半になっていた。まあ、確実に時間内に帰ってこれるルートを2時間かけて頭に叩き込んだということにしよう。

そのルートとは、「川に突き当たるまでまっすぐ。そこから川に沿って東へ。わかんなかったら誰かに聞こう」という外国人旅行者への道案内と同レベルのものであった。

川に突き当たるまでの道程は単調だったので、迷うことなく進んだ。段々とスピードがあがっていく。爽やかな汗を額に搔きながら、真っ直ぐに前を見つめて走る。

ーその顔やめて。

「トップガン・マーベリック」でヒロインを務めたジェニファー・コネリーに、そう言われる日も遠くないだろう。物事の上達には、適度な自惚れと勤勉さが大切だ。ランニングはこの哲学を実感させてくれる素晴らしいスポーツだ。

しかし、一向に川に突き当たらない。本気で「その顔やめてくれない!?」と言われかねない表情になってきた。Googleマップで確認すると、お目当ての川はいつのまにか通り過ぎていた。あぶねえ、ハリウッドまで走っちまうところだったぜ。

リサイクルセンターには到着したものの、部屋に帰ってきたのは2時35分。10分で着替えてご飯食べて大学に行って・・・。ミッション・インポッシブルだ。僕は自分の身体を労ることにした。講義や式典に出席しなければ、そもそも情報が得られない。時間管理は受信力以前の問題である。まずは5分前行動を身に付けたい。

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